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2004年11月23日

旧暦 二〇〇四年十月十二日 先負

偽札のババ抜き [ ドン相場 ]

 チョロンのある銀行で受け取った札に偽札が混じっていたという記事が新聞に掲載されていました。彼女はすぐに銀行に抗議したそうです。しかし、当然受け入れられるはずもなく、新聞への告発ということになったようです。

 偽札といえば中国の話を思い出します。聞くところによると中国国内での偽札流通量はかなりのものだそうです。以前中国に留学中の日本人と話をしたことがありました。その日彼はいつものように銀行で両替を済ませて家に帰ると、偽札が混じっていたのを発見したので、すぐに文句を言いに引き返したそうです。当然ながらその時もその偽札は交換されることはなかったとのことでした。
 中国でもベトナムでも、銀行は意図的にやってるのではないかという疑いもあります。銀行での組織ぐるみか行員単独での犯行かは分かりませんけど、中国人やベトナム人ならやりそうなことです。

 日本では、偽札を掴まされた被害者は国が補償してくれるという話を聞いています。それは本当なのでしょうか。警察に届け出れば本物と交換してもらえると、子供のころから信じている私ですが、もしそうなら日本はとても良心的な国です。もしそれが真実なら、ある意味日本は平和で、日本では偽札の流通量がきわめて少ないという証左なのかもしれません。ベトナムでそんなことをしたら、偽札を持った国民が殺到して国家財政が破綻するのでしょうか。

 カンボジアで両替しようと両替店を探していた時に、偽札の両替を誘われたことがありました。米ドルのみでしたが、その出来栄えによって価格が違うのだとそのブローカーは話していました。そう言えば北朝鮮は国家の政策としてドルを刷っているという噂は、面白半分でよく伝え聞く寓話です。それがカンボジアに流れているのだとか。その偽札両替も話を聞いただけですので真偽の程は確認していません。
 途上国だけでなく日本やアメリカでもそんなことはありそうなことですが、それは普通は波止場の倉庫か車のスクラップ工場とかで行われるものなのではないかと思ってしまうのは、映画の見すぎかもしれません。でも、途上国では随分オープンなんだなぁ、と当時はえらく感心しました。明るいうちから街中で声をかけられるわけですから。
 当時のカンボジアはまだポルポトも生存していましたし、道路脇の露天にタバコを買いに行くと、ショーケースの中に大麻が並んでいるようなご時世でしたから(今はどうなんでしょうか)、現在とは少し状況が変わっているかもしれません。

 ベトナムでは偽札に限らず、汚れた金、瑕のある金はどこに行っても敬遠されます。仮にそんな紙幣が釣りに混じっていて気付かずに受け取ってしまった時には、次にいつどこでそれを使うかを考えなければなりません。ベトナム人は、自分は釣りにこ汚い金を混ぜるくせに客から受け取る金を結構慎重に調べているからです。

 いくら汚れた金であっても正規の通貨なら、いずれこの国でも銀行が市民生活で機能する日が来れば、その問題は解消されるに違いありません。しかし、偽札は別です。国が対策を取らない限り、ベトナムではこれからもずっと市中でのババ抜きが繰り広げられてゆくことでしょう。

 日本人の1万円とベトナム人の最高紙幣である50万ドンでは、その重みが全く違うのです。50万ドン紙幣は庶民の日常生活にあまり使われないので、仮に10万ドンが一般人が見る最高額紙幣だとしても、日本人の1万円よりも10万ドンの方がはるかに価値があるものといえるでしょう。私はかつて一度だけ10万ドンの偽札を見せてもらったことがあります。
 「もうどうすることもできないです」
 それはどうするのかと私が聞いたところ、そのベトナム人はそう答えてくれました。

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