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VINAPARK

ベトナム社会主義共和国憲法

第8期国会第11回会議
1992年4月15日
前文
 数千年の歴史を通してベトナム人民は祖国を建設・防衛するために努力と創造力を以って勇敢に戦い、団結、礼節、忠誠及び不屈の伝統を鍛え上げ、そしてベトナム文化を造り上げてきた。
 1930年以降は、ホーチミン大統領が設立し、かつ訓練したベトナム共産党の指導のもと、長期にわたる困難かつ犠牲の多い革命闘争を経た後、8月革命を迎えたのである。
 1945年9月2日、ホーチミン大統領は独立宣言文を読み上げ、ベトナム民主主義共和国を建設した。その後、数10年にわたり、国内の数々の民族と、また世界の友好国の支援、特に社会主義国及び近隣諸国の貴重な支援を得て数々の勝利を収め、特にディエンビエンフー作戦及びホーチミン作戦により植民主義者及び帝国主義者の2度の侵略を打ち負かすことができた。そして国を解放し、統一することができ、そして人民による民主主義革命を完遂することができた。
 1976年7月2日、統一ベトナムの国会は国名を社会主義共和国と改めることを決議し、社会主義への移行を決意し、国を建設し、国際間の義務を遂行しつゝ、祖国を堅忍不抜の精神を以って防衛することにした。抗戦と国家再建の過程で、我が国は1946年、1959年、及び1980年の3度にわたり憲法を採択してきた。
 1986年以降は、第6回共産党全国大会が採択した総合的国家刷新が実施され、初期的ではあるが重要な成果を収めることができた。新しい状況と課題に対応すべく国会は1980年憲法の改正を決めた。
 この憲法は政治、経済、文化、社会、国防、保安システムを規定し、人民の基本的権利・義務、各種国家機関の構成・組織及び運営原則も規定している。
 マルクス・レーニン主義に照らし、ホーチミン思想により、かつ社会主義への過渡期における国家建設綱領に従い、我が人民は心を一つにすることを誓い、国家建設に向けた自助の精神を堅持し、全ての国と平和・友好及び協力の政策を実行し、憲法を遵守し、祖国の刷新、建設及び防衛に関して一層偉大な勝利を得ることを誓うものである。
第一章 ベトナム社会主義共和国−その政治システム
第1条
 ベトナム社会主義共和国は独立・主権・統一国家であり、その保全する領域は本土、沖合島嶼、領海及び領空から成っている。
第2条
 ベトナム社会主義共和国は人民の、人民による、人民のための国家である。全ての国権は労働者・農民・識者の連合体に基礎を置く人民に帰属する。
第3条
 国は人民による包括的支配権を保証し、常にそれを推進し、国家と人民の利益を損う全ての行為を厳しく罰し、繁栄かつ強力な国家を建設し、全ての人が充足され、自由で、幸福な生活を享受するための社会的公正を達成し、そして包括的発展の条件を取得するものである。
第4条
 ベトナム共産党は働く者の先導者として、かつ働く者、労働する人民、そして全人民の利益を忠実に代表するものとして、マルクス・レーニン主義とホーチミン思想を追求するものであり、かつ国家・社会の指導的勢力である。党の全ての組織は憲法と法律の枠内において活動する。
第5条
 ベトナム社会主義共和国はベトナム領域に居住する各民族の統一国家である。全ての民族間において平等、連帯、相互扶助の政策を実行し、民族間における差別的分断的行為を厳しく禁止する。全ての民族は自身の言語及び記述を使用する権利をもち、民族的独自性を保持し、自身の風俗、習慣、伝統及び文化を発展する権利をもつ。国は小数民族同胞の物質的精神的生活を順次向上させるための包括的開発政策を実行する。
第6条
 人民が選出し人民の意志と抱負を代表し、人民に責任を負う国会及び人民評議会を通して人民は国権を行使する。国会、人民評議会及び其の他の国家機関は全て民主的中央集権の基本により組織化され運営される。
第7条
 国会議員と人民評議会議員の選挙は全国共通、平等、直接及び秘密投票の原則に則って実施される。人民の信頼に値すると立証できない場合、国会議員は投票により、もしくは国会により弾劾され、人民評議会議員は投票により、もしくは人民評議会により弾劾される。
第8条
 国家機関、官吏、公務員は全て人民を尊重し、人民に心から任え、人民と密接な関係を保持し、人民の意見を聴取し、かつ人民による監視を受けなければならない。また、官僚主義、尊大、権威主義及び汚職に対しては断固として闘はねばならない。
第9条
 ベトナム祖国戦線とその傘下組織は人民の力の政治的基盤の役を担っている。全人民団結、人心を政治的精神的に一体化、人民による管理の建設及び安定化に参画、人民の合法的利益を保護するために国と協力、主権行使を推進し、憲法と法を周到に遵守し、国家機関、人民の代議員、官吏、公務員などの活動を監督することを任務とする。国は戦線とその傘下組織が効率的に活動できる条件を創出するものとする。
第10条
 労働組合組織は働く者及び労働者の社会政治的組織である。国家機関及び社会経済組織と共に組合は官吏、事務職、作業員及び労働者の利益を保護するものとする。国家機関及び社会組織活動の監督に参加し、かつ官吏、事務職、作業員及び労働者が国防及び国家建設に当る際の教育の任に当る。
第11条
 国家社会の諸事業に参加することを通じて、市民は草の根レベルの主権を行使する。公共の資産と人民の合法的権利と利益を保護する責任を有し、国家の保安と公共の安全、かつ社会秩序及び公共の活力を組織化するための支援をしなくてはならない。
第12条
 国は法により社会を管理し、常に社会主義的立法を強化しなくてはならない。国家機関、社会経済組織、人民軍の隊員及びその他の市民は周到に憲法と法を遵守し、憲法や法に対する犯罪や違反の予防と抑制を支援しなければならない。国家資産の横領、集合体や市民の合法的権利・利益に損害を与えた場合には法のもとに処理されるべきものとする。
第13条
 ベトナム祖国戦線は神聖にして不可侵のものである。戦線の独立性、主権、団結、領土保全、もしくは国家建設と防衛の大義に対抗する全ての試み及び行為は法のもとに罰を受けなければならない。
第14条
 ベトナム社会主義共和国は、世界の国々と、その社会的政治的システムの如何に拘らず、相互の独立、主権、領土保全、内政不干渉、平等及び相互利益を尊重することを基に、平和的友好的交流及び協力の政策を実行する。社会主義国及び近隣諸国との団結、友好、協力を強化し、世界の平和達成、国家独立、民主、社会発展という共通の闘いを積極的に支援し貢献することもベトナムの政策である。
第二章 経済システム
第15条
 国は国家管理と社会主義的方針のもとに、市場経済による多分野の商品経済を開発する。各種の生産組織形態をもつ多分野経済構造は全人民の所有、集団の所有、及び個人の所有のシステムに依存したものではあるが、その中核は全人民の及び集団の所有システムである。
第16条
 全ての労働力を使って一層人民の物質的精神的要請を充足し、国、集合体、個人、民間資本家、国営資本家などのあらゆる経済要素の各種潜在性を充分に発揮し、物質的技術的基盤建設を加速せしめ、世界の市場との広範な経済・科学・技術協力と交流を推進して国を繁栄させ強固なものとすることが国の経済政策の目標である。
第17条
 土地、森林、山岳、河川、湖沼、水資源、地下資源、領海、大陸棚、領空のその他資源、国が各種企業及びプロジェクトなど種々の経済、文化、社会、科学、技術、外交、国家保安防衛事業、其の他の資産などに投資したものは全人民の所有とする。
第18条
 全ての土地は計画と法に従って国が管理し、その使用は所定の目的に準じて有効な結果をもたらすことを保証する。国は組織や民間個人に土地の安定的継続的使用を委任する。それら組織や個人は土地の保護、土地の価値を高め、合理的に開発し、経済性をもって土地を使用する責任をもつ。国から委任された土地の使用権は法に準拠して移譲することができる。
第19条
 国営部門は統合され、開発され、特に主要分野及び領空において然り、そして国家経済で指導的役割を担うものとする。国営企業は生産・商事活動で自主権をもち、生産と商事活動が有効な結果を生むことを保証するものとする。
第20条
 市民の資金を集合することによって成長した集合体と、協同生産商事活動の努力は、自由合意、民主的、相互利益の原則に従って種々の形態に組織化されるものとする。国は協同組織の統合・拡大のために良好な条件を創出し、効率的に運営できるようにすべきである。
第21条
 民間個人及び民間資本部門では、人民が自己の方法で生産及び商業を組織化してよいし、国や人民にとり有益な活動であればどの範囲でも企業を設立することができる。家庭経済開発を奨励するものとする。
第22条
 全ての経済分野の生産・商業の企業は国に対する責務を全て充足しなくてはならず、全ては法の前において平等であり、その資本及び合法的資産は国の保護を受けるものとする。全ての経済分野に属する企業は、法の規定に従って国内外の企業、個人と合弁又はパートナーとなることができる。
第23条
 個人及び企業の合法的資産は国有化されないものとする。国防、保安、国益などで絶対に必要な場合は、国は市場価格で償うこととして個人・組織の資産を強制買収又は部分調達を行うことができる。強制買収による調達手順は法で規定する。
第24条
 国は対外経済関係を管理し拡大し、相互の独立と主権を尊重し、相互利益、及び国内生産の保護と活性化を基にして、全ての国及び国際機関とのあらゆる経済関係を推進するものとする。
第25条
 国は外国組織及び個人がベトナム法及び国際法と使用法に則ってベトナムに資本及び技術を投資することを奨励し、その外国組織及び個人の資本、資産及びその他の利益の合法的所有権を保障する。外国投資企業は国有化されない。海外に在住するベトナム人がベトナム国内に投資するための良好な条件を国は創り出すものとする。
第26条
 国は法律、計画及び政策により国家経済を管理する。国は責任を分割し、行政の省庁及び各レベルに権限を移譲する。
第27条
 国は全ての経済的社会的国営的活動において経済運営を行う。
第28条
 生産・商事活動における違反の全て、及び国家経済を破壊し、国益を損い、集合体及び個人の合法的権利・義務を損う全ての行為は法のもとに厳格に公正に処理されるものとする。国は生産者及び消費者の権利と利益を保護する政策を法制化するものとする。
第29条
 国家機関、軍部隊、経済及び社会組織及び個人の全ては、自然の富の合理的活用及び環境保護に係る国家規則を遵守しなければならない。自然の富を枯渇せしめ得るか、環境を害す原因となり得る行為の全ては厳に禁止する。
第三章 文化・教育・科学・技術
第30条
 国及び社会はベトナムの文化を保存し発展させることを求め、かつそれが国民的、近代的並びに人道的なものであるべきである。国はベトナムの全民族の文化的価値、ホーチミン的思想・倫理、及び人類文化の真髄を受け継ぎ、かつ推進するものとする。国は文化活動の包括的管理を実施する。反動的、腐敗思想文化は全て禁ずる。迷信及び有害な慣習は排除さるべきものとする。
第31条
 国は人民が全てにおいて発展するための良好な条件を創出するものとする。国は人民が憲法及び法に従って生活し労働することを促し、文化的で幸福な、そして愛国心をもち、社会主義を愛する家族を作り、世界の全ての国民と純粋な国際的、友好、協力の精神をもつべく文明的教育を実施するものとする。
第32条
 文学・芸術はベトナム人民の資質を養成し、精神的品位と美を養育する。国は文化、文学、芸術推進のため投資をし、人民が価値ある文学的芸術的活動を享受できるための良好な条件を創出し、文学的芸術的作品の創造的能力に支援を与えるものとする。国は文学・芸術面の多様性を推進し、大衆の文学・芸術活動を奨励するものとする。
第33条
 国は情報事業、新聞、ラジオ、テレビ、映画、出版、図書館及びその他の大衆伝達手段を推進する。文化・情報の面で国益を損い、人格・道徳かつベトナム人民の美しい生活様式に対して有害な全ての活動は厳に禁止する。
第34条
 国と社会は国民的文化的遺産の保存と開発を求め、保管と博物館事業に充分保護し、歴史的遺跡、革命的遺品、国民的遺産品、芸術作品、美的景観地などの修復・保全、かつそれらから最善の効果を得るために充分配慮する。歴史的遺跡、革命的遺品、芸術作品及び美的景観地を害する全ての行為を厳に禁止する。
第35条
 教育と訓練は政策の最優先のものである。人民の精神を高揚し、人材を訓練し、能力養成を視点に置いて国は教育事業を開発するものとする。教育の目的は、人格、道徳的資質、人民の能力を形成・養成し、働く人民を訓練して技能を身につけ、活力と創造性、国民的誇り、方正な品行、国家の繁栄に向けて努力する意志、それらにより国を建設し防衛することを吹き込むことにある。
第36条
 国は目的、内容、計画、教員に要する水準、試験を律する規則、学位及び証明書のシステムに関する国家教育システムの包括的管理を実施する。国は入学前教育、一般教育、職業訓練、大学及び大学院教育などの調和のとれた教育システムを開発し、初等教育を全国に普及して文盲者を削減し、国営学校、人民による学校、その他の各種の教育機関を開発する。国は教育投資を優先し、他の投資者を奨励する。優先的投資先としては高原地方、少数民族地方及び特に困難を伴う地方の教育事業とする。ホーチミン共産青年団をはじめとする大衆組織、社会組織、経済団体、家庭及び学校の全ては青年、若年、児童に対する教育の責任を負うものとする。
第37条
 科学・技術は国の社会経済開展において主要な役を担う。国は科学・技術の国家政策を策定し実施する。近代的科学・技術の建立に努め、全ての科学分野で協調のとれた開発を実現し、その目的とするところは方針、政策、法律制定のための科学的基礎作業を設け、技術を革新し、生産力を推進し、管理能力を向上し、経済発展の適正水準と成長率を確保し、そして国家防衛保安に貢献することにある。
第38条
 国は各種の経路を通して科学に投資し、財政的支援を与え、先導的科学・技術にその優先度を与える。国は科学的技術的官吏、特に高度の資格を有する者、技術者及び技能者の訓練と合理的活用に配慮する。科学者の創造的事業に対して良好な条件を創出することに努め、研究者のための各種の組織及び活動を考案し、科学研究を社会経済開展の要請と結び付け、科学研究と訓練及び生産・商事との間に良好な協調関係を確保する。
第39条
 国は人民の健康保護のため投資し、開発を保証し、統一的管理を実施する。遠大な方針によりベトナムの医薬品開発のため社会の全ての勢力を動員し、予防事業は治療、伝統医薬及び薬学と近代的医薬品と薬学などを結集し、国家保健サービスは人民の保健サービスと共に、そして国は健康保険を組織化して人民の全てが保健事業を享受できるようにすべきである。高原地方及び少数民族に対する保健事業を優先すべきである。私的組織や個人が違法に医療行為、医薬品生産・販売を行い、人民の健康を害することを厳に禁じる。
第40条
 母子への保健・保護を確保し、人口家族計画を有効ならしめるのは国、社会、家族及び人民の責任である。
第41条
 国及び社会は国民的、科学的かつ大衆的な体育・競技のシステムを開発することとする。国は体育・競技の全般管理を実施する。学校では体育を必修課目に組込み、人民の誰もが自由に練習できるような各種体育・競技活動を国は奨励し支援するものとし、体育・競技での止むことなき大衆活動に必要な条件を国は創出し、職業的競技活動及び競技技能者養成に注目すべきである。
第42条
 国及び社会は観光事業を推進するものとする。観光事業は国内外において拡大されるべきものとする。
第43条
 国は、文化、情報、文学、芸術、科学、技術、教育、保健、体育、競技などの分野での国際交流・協力を拡大するものとする。
第四章 社会主義ベトナム母国の防衛
第44条
 全人民は社会主義ベトナム母国の防衛に精励し、国の安全を確保するものとする。国は人民軍を核として全人民による国防と人民の安全を統合・強化するものとする。そして国の領域を防衛するため、国の全ての力を充分に統合するよう開発するものとする。
第45条
 人民軍の全部隊は母国及び人民に対して絶対的な忠誠を表はすものとする。その任務は、国の独立と主権、国家統一、領土保全、国家安全、社会秩序を防御する戦いに備えることであり、社会主義体制と革命の成果を守り、全人民を結集して国家を建設するために戦うことである。
第46条
 国は革命的人民軍を建設するものとする。それは充分に訓練された常備軍を順次近代化することとし、国家建設と国家防衛を結合し、全人民による人民軍の力と、他国の侵略に対抗するための社会主義体制による伝統的団結の力を結集した強力な予備軍と自衛軍を建設するものとする。
第47条
 国は革命的人民警察を建設するものとする。それは充分に訓練された常備力を順次近代化するものとする。この警察は人民を信頼し、大衆運動の中核として国と社会の秩序と、政治的安定、人民の自由と民主的権利、人民の生命・財産、社会の資産を守るものとする。警察は全ての犯罰予防を心懸け、かつそれらと戦うべきものとする。
第48条
 国は人民の愛国心と革命的英雄資質を充分に開発し、国防と安全に関して全人民を教育し、軍隊と後衛政策を制度化し、軍隊の適正な装備を確保するための国家防衛産業を樹立するものとする。国防を経済と調整せしめ、及び経済を国防と調整せしめ、将兵、国防作業員及び従業員の適正な物質的精神的生活条件を確保するものとする。人民の強力な武器を建立し、止ることなく国防の潜在力を強化するものとする。
第五章 人民の基本的権利義務
第49条
 ベトナム社会主義共和国の人民はベトナム国籍を有する者である。
第50条
 ベトナム社会主義共和国においては政治、公民、経済、文化及び社会の分野における権利は尊重される。それらは公民権に具現されており、憲法と法により定められている。
第51条
 人民の権利はその義務と不可分である。国は人民の権利を保障し、人民は国及び社会に対してその義務を履行しなくてはならない。人民の義務は憲法と法により定められている。
第52条
 全ての人民は法の前で平等である。
第53条
 人民は国の行政と社会の運営、国及び地域の問題の討議に参加する権利をもつ。人民は国家機関に請願することができ、国が組織する人民投票に投票することができる。
第54条
 人民は法の規定に従い、民族、性別、社会的背景、信仰宗教、文化的背景、職業、居住の時期に拘らず、18才に達した上で、投票権を有し、かつ、21才に達した上で、国会議員及び人民評議会議員の選挙に立候補する権利を有する。
第55条
 人民には働く権利と義務の両方がある。国と社会は働く人民のために一層の雇用を創出するための企画を策定するものとする。
第56条
 労働者保護のため国は政策を制定し制度を設定するものとする。国は就業時間、賃金率、国家公務員及び賃金所得者のための休暇と社会保険制度を制定するものとする。働く人民の利益のために他の形態の社会保険を奨励し推進するものとする。
第57条
 人民は法により定められた企業の自由を享受する。
第58条
 人民はその合法的所得、貯蓄、住居、企業又は他の経済組織における動産、生産手段、資金及びその他の所有物について所有権を享受する。使用目的で国から委任された土地については第17及び18条の規定による。国は人民の合法的所有権及び相続権を保護する。
第59条
 人民には訓練と指導を受けることについて権利と義務の両方がある。初等教育は義務制であり無償で受けられるものとする。人民は一般教育と職業訓練を各種の方法で受ける権利をもつ。特殊能力をもつ学生について、国と社会はそれらが果実を結ぶための条件を創出するものとする。国は学費及び奨学制について制度化するものとする。国及び社会は身体障害児が普通の智識と適正な職業訓練を受られるよう必要な条件を創出するものとする。
第60条
 人民は科学・技術の研究を行い、発明発見をなし、技術革新を先導し、生産を合理化し、文学的芸術的創作と評論に従事し、その他の文化的活動に参加する権利を有する。国は著作権及び工業所有権を保護する。
第61条
 人民は保健制度を利用する資格をもつ。国は病院費、及びその免除・減額のシステムを設定するものとする。人民は病疫予防及び公衆衛生に関する全ての規則を遵守する義務をもつ。不法にあへん及びその他の麻酔薬を生産、輸送、取引き、貯蔵及び使用することを厳に禁じる。国は麻薬常用者を強制的に処置し、危険な社会的疫病を処置するための規則を制定するものとする。
第62条
 人民は区画規則及び法に従って住宅を建設する権利を有する。借主及び貸主の権利は法により保護されている。
第63条
 男性と女性の人民は政治的、経済的、文化的、社会的、及び家庭などのあらゆる分野で平等の権利を有する。女性を差別したり、女性の尊厳を損ねる全ての行為は厳に禁止する。男性と女性は同一作業では同一賃金を受けるものとする。女性の勤労者は出産に関する制度を享受するものとする。女性の公務員及び賃金所得者は産前産後の有給休暇を享受するものとし、その間も法に定められた全ての賃金と手当を受けるものとする。国と社会は女性が全ての分野で資質を向上し、社会で女性の役を充分に担うことのできるよう全ての必要な条件を創出するものとする。そして産院、小児科、託児所、その他の社会福祉を開発し、それにより女性の家事を軽減し、一層積極的に女性が作業や研究に従事することを可能にし、医療を受け、かつ休業期間を享受し、そして母としての任務を全うできるようにするものとする。
第64条
 家庭は社会の細胞である。国は婚姻と家庭を保護する。婚姻は自由意志の原則、進歩的結合、一夫一婦及び夫婦平等の原則に準拠するものとする。親は子供を善良な人民になるまで養育する責任をもつ。子供及び孫は両親、祖父母を敬いそして世話をする義務をもつ。国及び社会は子供を差別しないものとする。
第65条
 子供は家庭、国及び社会による保護、養育及び教育を享受するものとする。
第66条
 家庭、国及び社会は若年者の勉学、勤労、休息、身心の開発にとって良好な条件を創出するものとし、若年者に道徳、国民的伝統、公民としての自覚及び社会主義思想を教育し、若年者が創造的労働力及び国家防衛の前衛となるよう教育するものとする。
第67条
 戦傷者、傷病兵、軍人遺族、及び革命殉死者は国の政策上の特恵措置を享受するものとする。戦傷者は身体回復のための良好な条件を享受するものとし、健康状態に適合する雇用を得、安定した生活条件を得るための支援を享受するものとする。国にとって勲功業績者に列せられた個人及び家族は推賞及び報賞を受け、そして世話を受けるものとする。老令者、虚弱者及び孤児で支援のない者は国の援助を受けるものとする。
第68条
 人民は国内での移動と居住の自由を享受するものとする。また法の規定に従って自由に海外へ旅行し、海外から帰国することもできる。
第69条
 人民は法の規定に従って見界及び言論の自由、報道の自由、情報を受ける権利、集合の自由、連合の形成及び示威行為の実施を享受するものとする。
第70条
 人民は信条及び宗教の自由を享受し、どの宗教を信じることも信じないことも自由である。全ての宗教は法の前において平等である。全ての信仰・宗教の礼拝場は法により保護されるものとする。何人たりとも信仰・宗教の自由に違反してはならず、何人たりとも法及び国の政策に違反するような信仰・宗教の誤用をしてはならない。
第71条
 人民はその生命、健康、名誉及び尊厳について人間の不可侵性と法による保護を享受するものとする。極度の違反を除き何人たりとも人民裁判所の判定なしに、もしくは人民監督管理院の裁定・裁可なしに逮捕されることはない。人を拘留・拘置するには法を充分に遵守したうえでなされねばならない。
第72条
 何人たりとも裁判所の判決が充分に法的効力を得る以前に有罪視されたり罰を受けることはない。法律違反の科で逮捕、拘留、告訴、裁判を受ける者は誰でも物的被害及び名誉毀損の回復を得る資格をもつものとする。法に反して他人を逮捕、拘留、告訴、裁判にかけて人に損害を与えた者は誰でも厳しく処置されるものとする。
第73条
 人民はその住居の不可侵性の資格をもつものとする。他人の住居には、法で権限を与えられた場合を除き、何人たりとも入ることはできない。人民の書状、電話・電報による交信の安全と守秘性は保障されるものとする。人民の書状・電報に関する家宅捜査、開封、制限及び押収は法に準拠して関係当局のみがこれを実施できるものとする。
第74条
 人民は国家機関、経済組織、社会組織、人民軍の部隊もしくは如何なる個人による非法行為については関係当局に対して不服又は非難の申立てをする権利を有する。不服又は非難は法の定めた期間内に国家機関が調査、解決をしなくてはならない。国の利益、又は集合体及び個人の権利と合法的利益に反する行為は全て、期間内に厳しく処置されるものとする。損失又は傷害を受けた者は、物質的被害と名誉毀損を回復する資格をもつものとする。不服又は非難をした者に対する復讐、もしくは他人を中傷して害を与える目的の不服・非難申立て権の誤用は厳しく禁止されている。
第75条
 国はベトナム人で海外に在住する者の合法的利益を保護するものとする。国は海外に在住するベトナム人が家族及び出生国と密接な関係を保持し、国家建設に貢献するために必要な条件を創出するものとする。
第76条
 人民は母国に忠誠を表わさねばならない。母国を裏切ることは最悪の犯罪である。
第77条
 母国を防衛することは人民の神聖な責務であり崇高な権利である。人民は兵役を充足し、挙国一致の国家防衛に参加しなければならない。
第78条
 人民は国家資産及び公共の利益に敬意を払い、かつ保護する責務をもつ。
第79条
 人民は憲法及び法を遵守し、国家保安と社会秩序の防衛に参加し、国家秘密を保守し、公生活の規則を遵守しなければならない。
第80条
 人民は法の規定に従い税を納入する義務と、公益労働を遂行する義務をもつ。
第81条
 ベトナムに居住する外国人はベトナムの憲法と法を遵守しなければならない。その生命、所持品及び合法的利益は法の規定に従い国の保護を受けるものとする。
第82条
 ベトナム社会主義共和国は、自由を求めて闘う外国人、国の独立のため、社会主義のため、民主主義と自由のため、又は科学研究の故に危害を受けている外国人のための一時避難所を与えることを考慮するものとする。
第六章 国会
第83条
 国会は人民を代表する最高の組織であり、かつベトナム社会主義共和国の国権の最高組織である。立憲・立法力をもつのは国会が唯一の組織である。国会は基本的国内対外政策の決定、社会経済課題、国家防衛及び安全問題、国家機構の組織と活動を律する必須原則、社会関係及び人民の活動などに関して決定を行う。国会は国の全ての活動に対する主権的管理を行使する。
第84条
 国会は次の義務と権限を有する。
  1. 憲法制定と改正、立法と改正、法律及び布告発布計画
  2. 憲法、法律及び国会決議に準じた主権的管理の行使
  3. 社会・経済発展計画の決定
  4. 国の財政・通貨政策の決定、国家予算案と予算支出の決定、国家予算の承認、税の制定、変更又は廃止
  5. 国の国籍政策の決定
  6. 国会、大統領、政府、人民裁判所、人民検察院及び地方行政などの組織と活動を規定する。
  7. 国の大統領、副大統領、国会議長、国会常任委員会副議長と委員、首相、最高人民裁判所長官、最高人民検察院院長の選任、解除、及び免職する。副首相、各省大臣及びその他の政府幹部の指名、解除及び免除に関する首相の提案を裁可する。
  8. 政府各省及び省レベル政府機関を設置もしくは廃止し、地方省及び中央管轄市の制定、合併、分割、又は境界調整、特別行政経済部を設置もしくは解散する。
  9. 大統領、国会常任委員会、政府、首相、最高人民裁判所、最高人民検察院などが発布した全ての文書で、憲法と法及び国会決議と矛盾するものを廃止する。
  10. 恩赦を公布する。
  11. 人民軍、外交機関及び其の他の官吏職位・階級を制定し、勲章、記章、国家叙位及び栄誉を制定する。
  12. 戦争と和平に係る問題を決定し、緊急事態及び其の他の国家防衛と安全を保証するための特別措置を宣言する。
  13. 対外関係の基本政策を決定し、大統領の提議により調印もしくは参加した国際協定の批准もしくは廃止を行う。
  14. 国民投票を実施する。
第85条
 各国会の会期は5年である。会期終了の2カ月前に新国会が選出されるものとする。選挙手順及び国会議員数は法で定める。特別の場合は議員総数の少くとも3分の2の了承を得て国会は会期を短縮又は延長できるものとする。
第86条
 国会は毎年2回の会議を開催し、常任委員会が召集する。大統領、首相もしくは議員総数の最低3分の1の要請、もしくは常任委員自体の決定により、臨時国会を常任委員会が召集することができる。新しく選出された国会は選挙後遅くとも2カ月以内に第1回会議を召集しなければならない。その会議の開会及び議長職は新国会の新任議長が選出されるまでは前国会の議長がこれを行うものとする。
第87条
 大統領、国会常任委員会、国籍問題審議会、国会各委員会、政府、最高人民裁判所、最高人民検察院、ベトナム祖国戦線とその傘下組織は国会に法案を提出することができる。国会のメンバーは国会への法及び法案に係る動議を提出することができる。国会に法案及び法律に係る動議を提出する手順は法でこれを定める。
第88条
 法及び国会決議は国会議員総数の半数以上の承認を得なくてはならない。但し第7条に規定したメンバーの免職、第85条に規定した会期の短縮・延長、第147条に規定した憲法改正については議員総数の最低3分の2の承認がなければならない。法及び国会決議事項はその採択後遅くとも15日以内に公布されなくてはならない。
第89条
 国会は資格審査委員会を選出し、その委員会の報告に基いて委員の資格を確認するものとする。
第90条
 国会常任委員会は国会の常設委員会である。その編成は次の通りとする。
−国会議長
−国会副議長
−委員
 常任委員会のメンバーは国会が決定する。国会常任委員会の委員は同時に政府幹部を兼任することはできない。各会期の常任委員会は、新国会が新常任委員会を選出するまでは職務を完遂し、権限を行使するものとする。
第91条
 国会常任委員会の責務・権限は次の通りである。
  1. 国会議員選挙を公布し指導をする。
  2. 国会の会議の準備をなし、運営と指導を行う。
  3. 憲法、法及び布告の解釈をする。
  4. 国会の委任を受けた事項について布告を制定する。
  5. 憲法、法、国会決議、布告、国会常任委員会決議などの実施に当り、政府、最高人民裁判所、最高人民検察院などの活動を監督・管理し、正規の文書で政府、首相、最高人民裁判所、最高人民検察院が発布したもので憲法、法及び国会決議に反するものの執行を停止し、その件を国会に報告してそれらの廃止について国会の決定を得、政府、首相、最高人民裁判所、最高人民検察院の文書で布告及び国会常任委員会決議に反するものを廃止する。
  6. 人民評議会の活動に関して監督管理を行い、指導を行い、地方省及び中央直轄市の人民評議会における誤りの決議を取消し、地方省及び中央直轄市の人民評議会が人民の利益を著しく害する場合はこれらを解散する。
  7. 国籍問題審議会と国会委員会の活動を指示し、調和をとり、そして調整し、国会のメンバーに支援を与えて良好な作業条件を保証する。
  8. 国会の休会中、副首相、各省大臣其の他の政府幹部の指名、解任、免職に関する首相の提案を是認し、この件を次回の国会に報告する。
  9. 国会の休会中に外国からの侵略があれば戦争事態を宣言し、その件を次回の国会に報告して承認を得る。
  10. 総動員もしくは部分動員を宣言する。全土にもしくは特定地域に緊急事態を宣言する。
  11. 国会の対外関係を実行する。
  12. 国会の決議に従って国民投票を組織化する。
第92条
 国会議長は会議の議長となり、法及び国会決議には署名を付して認証し、国会常任委員会の活動に指導性を与え、対外関係の実施を組織化し、そのメンバーとの関係を保持する。国会副議長は議長が求められた任務を遂行するに当り議長を補佐する。
第93条
 布告及び国会常任委員会決議は、委員の半数以上の承認を得なければならない。採択後15日以内に公布されねばならないが、大統領により再審議のために国会に差し戻された場合を除く。
第94条
 国会は議長・副議長及び委員で構成する国籍問題審議会を選任するものとする。国籍問題審議会は国籍に関する問題を研究して国会に提案し、国籍に関する政策の実施並びに高原及び少数民族居住地域の社会経済発展計画の事業実施について監督管理を行う。国籍関係政策の決定を公布するに先立ち、政府は国籍問題審議会の意見を求めなくてはならない。国籍問題の政策を施行するための討議が国会常任委員会もしくは政府部内の会議で行われる場合は国籍問題審議会議長はこれらに出席することができる。国籍問題審議会は第95条にて国会常任委員会に課されたと同様の他の責務と権限をもつ。国籍問題審議会委員の多くは特定課題を担任する。
第95条
 国会はその委員会を選出する。国会の委員会は法案を研究検査し、法、布告案及び他の案に係る提案を行い、国会若しくは国会常任委員会から委任された事項を報告し、立法計画に関する意見を国会及び国会常任委員会に提出し、法に規定された範囲内にて監督管理を行使し、その活動範囲内の問題に関して提案を行う。各委員会の委員の多くは特定課題を担任する。
第96条
 国籍問題審議会及び国会委員会は政府幹部、最高人民裁判所長官、最高人民検察院院長、その他の政府官吏に対し特定事項について報告もしくは文書の支給を要請することができる。要請を受けた者はそれを充足しなければならない。国会の国籍問題審議会及び委員会からの提案事項について、国家機関はそれらを調査して回答する責任を有する。
第97条
 国会の代議員は、その出身選挙区民のみならず全国人民の意志と抱負を代表するものである。国会の代議員は選挙民と密接な結合を保持し、選挙民による管理に身を挺し、国会及び国家機関での考慮を得るため選挙民の意向と抱負を忠実に収集・反映し、代議員自体の活動及び国会の活動を報告するために選挙民と定期的接触を保ち、選挙の要請や提案に応え、人民による不服や非難を調査し、監督し、処理方を監視し、かつ人民が権利を行使するに当り指導・支援を与える。国会の代議員は憲法、法、国会決議を大衆化し、人民をして実践せしめるものとする。
第98条
 国会の代議員は、大統領、国会議長、首相、各省大臣、其の他政府幹部、最高人民裁判所長官、最高人民検察院院長などに質問する権利をもつ。質問を受けた者は、その会議期間中に回答しなければならない。調査を必要とする際は、国会の決議により回答を常任委員会宛に、又は次の会議で行うか、もしくは書面による回答を許すこともできる。国会の代議員は、その関心事項について回答するように国家機関、社会組織、経済組織及び軍部隊に請求する権利を有する。これら機関、組織及び部隊の長は、法の定めた期間内に代議員が寄せた質問に回答しなくてはならない。
第99条
 国会の代議員は国会の同意なしで、会議の休会中は常任委員会の同意なしで逮捕又は告訴されることはない。甚しい違反の科で代議員が臨時に拘留された場合、逮捕した機関はその事実を直ちに国会もしくはその常任委員会による調査と決定を得るために報告しなければならない。
第100条
 国会の代議員はその職務に要する時間を奉仕しなければならない。代議員が職務を遂行するに必要な物を支給し、必要な条件を創出することは、国会常任委員会、首相、各省大臣、其の他政府及び他の政府機関幹部の責任である。国は代議員の活動に必要な資金を確保するものとする。
第七章 国の大統領
第101条
 国の大統領は国家元首であり対内対外的にベトナム社会主義国を代表するものである。
第102条
 国の大統領は国会代議員の中から国会が選出する。その職務は国会に対して責任をもつものとし、国会に報告するものとする。職務期間は国会の期間と同じである。国会の期間終了後も、新国会により新大統領が選出されるまでは在任するものとする。
第103条
 国の大統領の職責・権限は次の通りである。
  1. 憲法、法、布告を公布する。
  2. 軍を統括し、国防安全審議会議長職を保有する。
  3. 国の副大統領、首相、最高人民裁判所長官、最高人民検察院院長の選任、解任、免職について国会に提案する。
  4. 国会又は常任委員会の決議を基に、副首相、閣僚及び政府の他のメンバーの任命、解任、免職を行う。
  5. 国会又は常任委員会の決議を基に戦争事態を宣言し、恩赦を宣言する。
  6. 国会又は常任委員会の決議を基に、総動員令もしくは部分動員令を発令し、全国もしくは特定地域の緊急事態を宣言する。
  7. 第91条第8及び9項に規定する事項に関する布告及び決議の再検討を、採択後10日以内に、国会常任委員会に提案する。これらの布告及び決議が大統領による異議と共に常任委員会で再度採択された場合は、大統領は次に続く国会会議でその問題の決議を得るため報告するものとする。
  8. 副大統領、最高人民裁判所裁判官、最高人民検察院副院長を任命、解任、免職する。
  9. 人民軍高級将校に職位・階級を、外交官に職位・階級を、其の他官吏の職位・階級を授与し、勲章、記章、国家的栄誉及び報賞を授与する。
  10. ベトナムの特命全権大使の任命と召還、外国の特命全権大使を容認、其の他の長と共にベトナム社会主義共和国に代って国際協定の交渉及び調印、及び国際協定を承認し加盟する。但し国会の承認を要する場合を除く。
  11. ベトナム国籍を授与し、ベトナム国籍を解除し、ベトナム国籍を剥奪する。
  12. 特赦を与える。
第104条
 国家防衛安全審議会は大統領、副大統領及び議員で構成する。国の大統領は国家防衛安全審議会議員名簿を国会の承認を得るために提出する。国家防衛安全審議会議員は国会の代議員である必要はない。国家防衛安全審議会は国防のために国の全ての軍事力と潜在力を動員するものとする。戦時においては国会は国家防衛安全審議会に特定の任務及び権限を委任する。国家防衛安全審議会は一団として運営し、その決定は過半数の投票によるものとする。
第105条
 大統領は国会常任委員会の会議に出席する資格をもつ。必要と大統領が認めた際は政府の会議に出席できる。
第106条
 大統領はその職務遂行と権限行使のため命令及び決定を発布するものとする。
第107条
 副大統領は国会の代議員の中から国会により選出される。大統領の職務遂行に当り大統領を補佐し、特定の任務遂行のため大統領から委任を受けることがある。
第108条
 大統領が長期間にわたり職務遂行不能の際には、副大統領が大統領を代行する。大統領職が空席の際は、国会が新大統領を選出するまでは副大統領が大統領代行となる。
第八章 政府
第109条
 政府は国会の執行機関であり、ベトナム社会主義共和国の国家行政の最高機関である。政府は国の政治、経済、文化、社会、国防、安全及び対外関係業務を遂行するための統括管理を実施する。中央から草の根レベルに至るまでの国家機構の効率性を保証し、憲法と法を重視し実践し、国家建設及び防衛に当り人民の支配権を推進し、人民の物質的文化的生活条件の安全と向上を保証することとする。政府は国会に対して責任を負い、国会、常任委員会及び大統領に報告するものとする。
第110条
 政府は首相、副首相、閣僚及び他の幹部で構成される。首相を除き、そのメンバーは国会のメンバーである必要はない。首相は国会に対する責任を負い、国会、常任委員会及び国の大統領に報告をする。副首相は首相の任務遂行に当り首相を補佐する。首相不在の際は、副首相の1人がその代理として政務を管掌する。
第111条
 ベトナム祖国戦線中央委員会議長、ベトナム労働同盟の議長、及び大衆組織の長は、関連問題が討議される政府の会議に招かれて出席するものとする。
第112条
 政府の責務と権限は次の通りである。
  1. 各省、省レベル機関及び政府機関、全てのレベルの人民委員会の業務を指揮し、中央から草の根レベルに至る政府行政機構の統一的システムを設定統合し、人民評議会が上部行政機構よりの指示事項を実行する際の指導と管理を行い、法が定めた人民評議会の任務遂行及び権限行使に際して良好な条件を創出し、国の官吏及び公務員を訓練し、養成し、処置し、雇用する。
  2. 国家機関、経済組織、社会組織、軍部隊及び人民の間における憲法と法の実践を保証する。憲法及び法に関して人民の間に宣伝及び教育事業を組織化し指揮する。
  3. 法案、布告及び他のプロジェクトを国会とその常任委員会に提出する。
  4. 国家経済の建設及び開発の包括的管理を保証し、国の財政・通貨政策を実施し、全人民の所有に帰する資産の効率的活用を管理・保証し、文化、教育、保健、科学技術の発展を推進し、社会経済発展計画を実施して国家予算を実行する。
  5. 人民の権利と合法的利益を保護する措置を講じ、人民の権利を行使し義務を遂行するための条件を創出し、国と社会の資産と利益を保護し、かつ環境を保護する。
  6. 国防と安全のため全人民を結集・強化し、国家の保安と社会の秩序を保証し、人民軍を建設し、総動員を実施し、国の緊急事態を宣言し、かつ国を防衛するために必要な他の措置を講じる。
  7. 国の資産調査と統計調査を組織化し、かつ実施し、国家検査及び管理を実施し、国家機構内での官僚主義と汚職とに戦い、人民による不服及び非難を解決する。
  8. 国の対外関係の包括的管理を行い、政府に代って国際協定に調印及び承認し、ベトナム社会主義共和国が同意又は加盟した国際協定の実践を指揮し、国益及び外国に居住するベトナム人民及び組織の合法的利益を保護する。
  9. 社会政策、国籍問題政策、宗教に係る政策を実施する。
  10. 地方省及び中央直轄市レベルより低い行政区画の境界調整に関して決定する。
  11. ベトナム祖国戦線及び全ての大衆組織と協調して夫々の義務を遂行し権利を行使し、そして全てが効率的に機能するような条件を創出する。
第113条
 政府の任期は国会のそれと同じである。国会の期間終了に際しては、新政府が新国会により設定されるまでは現政府が引き続きその任に留るものとする。
第114条
 首相の職責と権限は次の通りである。
  1. 政府、政府メンバー、全てのレベルにおける人民評議会の業務を指揮し、閣僚会議の議長をする。
  2. 各省及び省レベル機関の設置又は解散を国会に提案し、副首相、閣僚及び他の政府メンバーの任命、解任、免職について国会に提案し、国会が休会の際は常任委員会に提案して承認を得る。
  3. 副大臣及び同レベルの官吏の任命、解任及び免職をなし、地方省及び中央直轄市人民委員会委員長及び副委員長の選任、解任、推薦、免職を承認する。
  4. 閣僚及び他の政府幹部による決定、指令、通達など、及び人民評議会、地方省及び中央直轄市人民委員会委員長による決定及び指令などで、憲法、法、及び他の上級政府機関の正式文書と矛盾する際にはそれらを保留又は取消す。
  5. 地方省及び中央直轄市人民評議会決議が憲法、法、及び他の上級政府機関の正式文書と矛盾する際はその執行を保留とし、同時に国会常任委員会にそれらの取消しを提案する。
  6. 政府が処理する主要問題について広報媒体を通して定期的に人民に報告する。
第115条
 憲法、法、国会決議、国会常任委員会の布告及び決議、国の大統領の命令及び決定などを基に、政府は決議及び布告を発布し、首相は決定と指令を発布し、これら正式文書による命令の執行を監督するものとする。政府管掌の主要事項は集団合議にかけ、過半数の意に準拠した決定を行うものとする。
第116条
 閣僚及び他の政府幹部は夫々の権限にある部門や分野における国家行政について全国を通して責任を有する。草の根レベルの生産・商事部門が法の規定に従った自主経営ができるよう保証するものとする。憲法、法、国会決議、国会常任委員会の布告及び決議、国の大統領の命令及び決定、政府及び首相の文書による命令などを基に、閣僚、他の政府幹部、政府機関の長は決定、指令、通達を発布し、全ての分野、地域及び草の根部分によるこれら正式文書の指令の執行を管理するものとする。
第117条
 閣僚及び他の政府幹部は夫々の管掌する部門・分野において首相及び国会に対して責任を負うものとする。
第九章 人民評議会と人民委員会
第118条
 ベトナム社会主義共和国の行政部門の配置は次の通りである。国は中央直轄の地方省と市に分かれている。地方省は県と地方市及び町に分かれ、中央直轄市は市内区と郊外区及び町に分かれる。県は郡と村に、地方市及び町は区と郡に、そして市内区は区に分かれる。さまざまな行政部門での人民評議会及び人民委員会の設置は法で定める。
第119条
 人民評議会は国権の地方機関である。それは人民の意志、抱負及び支配権を代表し、地方人民により選出され、人民及び上級国家機関に対して責任を負う。
第120条
 憲法、法、及び上級国家機関の正式文書による命令に基づき、人民評議会は憲法及び法を地方レベルで誠真に実施する措置について決議をする。そして社会経済発展計画及び予算執行について、地方レベルでの国防及び安全について、人民の生活条件の安定・向上の措置について、上級機関から委任された責務を完遂し、国全体に対する全ての義務を完遂するための決議をする。
第121条
 人民評議会の議員は地方人民の意志と抱負を代表するものである。選挙民と密接な関係を保持しなくてはならず、選挙民の支配権に身を挺し、選挙民との定期的接触を保持し、自身及び人民評議会の活動を定期的に報告し、そして要求や提案に応じ、人民の不服及び非難を検討して解決処理を図るものとする。人民が法、国家の政策及び人民評議会決議を遵守するよに、そして国の行政に参加するように導くことが人民評議会議員の責務である。
第122条
 人民評議会議員は人民評議会議長、人民委員会委員長及び委員、人民裁判所裁判官、人民検察院の長及び人民委員会傘下機関の長に対して質問する権利をもつ。質問を受けた官吏は法の定めた期間内に回答しなければならない。人民評議会議員は地方の国家機関に提案をする権利をもつ。これら機関の長は議員を受け入れ、彼の提案になる問題の調査、解決をする責任をもつ。
第123条
 人民評議会により選出された人民委員会は評議会の執行機関である。地方の国家行政機関である。憲法、法、上級国家機関の正式文書の命令及び人民評議会決議を実践することが任務である。
第124条
 その責務を権限の範囲で人民委員会は決定及び指令を発布し、その執行を監督する。人民委員会委員長の人民委員会の活動に対して指導及び運営指針を与えるものとする。地方の主要事項を決定するに当っては、人民委員会は集団合議制をとり、その決定は過半数の意志に準ずるものでなければならない。人民委員会委員長は人民委員会傘下の機関及び下級の人民評議会による誤った決定は保留もしくは取消すことができる。下級の人民評議会による誤った決議は保留すると同時に、同級の人民評議会にこの決議取消しを提案することができる。
第125条
 ベトナム祖国戦線の議長及び地方大衆組織の長は関連問題が討議される際は人民評議会の会議出席に招かれ、人民委員会の会議出席に招かれるものとする。人民評議会及び人民委員会は全ての分野に係る地方状況について祖国戦線及び大衆組織に定期的報告をするものとする。かつ地方の勢力増強及び社会経済発展に関する意見や提案を聴取し、人民が国と共に社会経済、国家防衛、及び安全の問題を地方レベルで実施するよう協力するものとする。
第十章 人民裁判所及び人民検察院
第126条
 人民裁判所及び人民検察院は、それぞれの機能の範囲で社会主義の合法性、社会主義体制、人民の支配権、国と集合体の資産、人民の生命、財産、自由、名誉及び尊厳を防御することが責務である。

人民裁判所

第127条
 最高人民裁判所、地方人民裁判所、軍事法廷及び法により設置された他の法廷はベトナム社会主義共和国の司法機関である。特別の状況の下で、国会が特別法廷の設置を決定することがある。草の根レベルでは、法に従って適宜の民衆組織を設置して人民の間における些細な違反や紛争処理に当るものとする。
第128条
 最高人民裁判所長官の任期は国会のそれと同じである。裁判官の任命、解任、免職及び任期の制度と、全てのレベルの人民裁判所陪審員の選出、任期のシステムは法でこれを定める。
第129条
 人民による陪審員が参加する人民裁判所の裁判並びに軍人の陪審員が参加する軍事法廷の裁判は法の規定に準拠して実施されるものとする。裁判中の陪審員は裁判官と平等の立場にあるものとする。
第130条
 裁判中、裁判官と陪審員は独立しており、法にのみ従うものとする。
第131条
 人民裁判所では、法が定めた場合以外は、公聴制をとる。人民裁判所の裁判は集団審議の方式をとり、その判決は、過半数の意志に準拠するものとする。
第132条
 被告人が弁護を受ける権利は保障されている。被告人は自身を弁護することも他の者に弁護を依頼することもできる。法廷弁護士組織を設置し、被告人及び法律問題の他の当事者の権利と合法的利益を弁護し、かつ社会主義の公正性防御に貢献するものとする。
第133条
 人民裁判所はベトナム社会主義共和国人民で諸種の民族に属している者が、法廷において独自の言語を用い独自の筆記方を用いることを保証する。
第134条
 最高人民裁判所はベトナム社会主義共和国の最高の司法機関である。それは地方人民裁判所及び軍事法廷の司法業務を監督し指導するものとする。それは特別法廷及び他の法廷の司法業務を監督し指導するが、これらの法廷が国会で設置される際に別途の定めがある場合はこの限りではない。
第135条
 最高裁判所長官は報告書を作成して国会に提出する任務をもち、国会が休会中は国会常任委員会及び国の大統領に提出するものとする。地方裁判所の所長は報告書を作成して人民評議会に提出する任務をもつものとする。
第136条
 人民裁判所の判決及び決定で法的効力を得たものは国家機関、経済組織、社会組織、人民軍部隊及び全ての人民により尊重されなければならない。そして関係する個人及び機関により真摯に実行されなければならない。

人民検察院

第137条
 最高人民検察院は各省、省レベル機関、その他政府機関、地方政府機関、経済組織、社会組織、人民軍部隊及び人民が法を遵守するよう監督し管理する。検察権を行使し、真摯にして画一的な法の施行を保証するものとする。
 地方人民検察局はその長が指揮する。下級局の長は上級局の長の指導下に入る。地方人民検察局の長、及び軍事検察局の長は最高人民検察院院長の総合指揮下に入るものとする。検察委員会の設置、人民検察局の長が処理する問題、検察委員会が審議して過半数の意見に準じて解決すべき主要問題などは法にこれを定める。最高人民検察院院長の任期は国会のそれと同じである。地方人民検察局及び軍管区・軍区の軍事検察局の長、次長及び局員は最高人民検察院院長が任命、解任及び免職する。
第139条
 最高人民検察院院長は報告書を作成して国会に提出し、国会が休会中は国会常任委員会及び国の大統領に提出する義務がある。
第140条
 地方人民検察局の長は、当該地域における法の施行状況について人民評議会に報告する義務があり、人民評議会議員の質問に回答するものとする。
第十一章 国旗、国章、国歌、国の首都及び国の祝日
第141条
 ベトナム社会主義共和国の国旗は長方形、巾は長さの3分の2、紅色地の中央に5尖端を有する金星1コを配す。
第142条
 ベトナム社会主義共和国の国章は円形、紅色地の中央に5尖端を有する金星1コを配し稲穂の枠に囲まれ、その枠の下側は歯車で、「ベトナム社会主義共和国」の文字を刻す。
第143条
 ベトナム社会主義共和国国は「前戦に進め」の曲と詩を有す。
第144条
 ベトナム社会主義共和国の首都はハノイである。
第145条
 独立宣言の日、1945年9月2日が、国の祝日である。
第十二章 憲法の効力及び憲法の改正
第146条
 ベトナム社会主義共和国憲法は国の基本法であり、最高の法的効力をもつ。其の他の全ての法令は憲法に準拠しなくてはならない。
第147条
 国会のみが憲法を改正する権利をもつ。憲法の改正は代議員総数の最低3分の2の承認がなければならない。

【参考】
東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室アジア・太平洋諸国データベース内に掲載されていたものを拝借しました。
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